2006年06月08日

吾輩は猫である 一

 吾輩(わがはい)は猫である。名前はまだ無い。
 どこで生れたかとんと見当(けんとう)がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて続きを読む
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吾輩は猫である 二

 吾輩は新年来多少有名になったので、猫ながらちょっと鼻が高く感ぜらるるのはありがたい。
 元朝早々主人の許(もと)へ一枚の絵端書(えはがき)が来た。これは彼の交友某画家からの年始状であるが、上部を赤、下部を深緑(ふかみど)りで塗って、その真中に一の動物が蹲踞(うずくま)っているところをパステルで書いてある。主人は例の書斎でこの絵を、続きを読む
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吾輩は猫である 三

 三毛子は死ぬ。黒は相手にならず、いささか寂寞(せきばく)の感はあるが、幸い人間に知己(ちき)が出来たのでさほど退屈とも思わぬ。せんだっては主人の許(もと)へ吾輩の写真を送ってくれと手紙で依頼した男がある。この間は岡山の名産吉備団子(きびだんご)をわざわざ吾輩の名宛で届けてくれた人がある。だんだん人間から続きを読む
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吾輩は猫である 四

 例によって金田邸へ忍び込む。
 例によってとは今更(いまさら)解釈する必要もない。しばしばを自乗(じじょう)したほどの度合を示す語(ことば)である。一度やった事は二度やりたいもので、二度試みた事は三度試みたいのは人間にのみ限らるる好奇心ではない、猫といえどもこの心理的特権を有してこの世界に生れ出でたものと認定していただかねばならぬ。三度以上繰返す時続きを読む
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吾輩は猫である 五

 二十四時間の出来事を洩(も)れなく書いて、洩れなく読むには少なくも二十四時間かかるだろう、いくら写生文を鼓吹(こすい)する吾輩でもこれは到底猫の企(くわだ)て及ぶべからざる芸当と自白せざるを得ない。従っていかに吾輩の主人が、二六時中精細なる描写に価する奇言奇行を弄(ろう)するにも関(かかわ)らず逐一これを読者に報知するの能力と根気のないのははなはだ遺憾(いかん)である。遺憾ではあるが続きを読む
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吾輩は猫である 六

 こう暑くては猫といえどもやり切れない。皮を脱いで、肉を脱いで骨だけで涼みたいものだと英吉利(イギリス)のシドニー・スミスとか云う人が苦しがったと云う話があるが、たとい骨だけにならなくとも好いから、せめてこの淡灰色の斑入(ふいり)の毛衣(けごろも)だけはちょっと洗い張りでもするか、もしくは続きを読む
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吾輩は猫である 七

 吾輩は近頃運動を始めた。猫の癖に運動なんて利(き)いた風だと一概に冷罵(れいば)し去る手合(てあい)にちょっと申し聞けるが、そう云(い)う人間だってつい近年までは運動の何者たるを解せずに、食って寝るのを天職のように心得ていたではないか。無事是貴人(ぶじこれきにん)とか称(とな)えて、懐手(ふところで)をして座布団(ざぶとん)から腐れかかった尻を離さざるをもって旦那の名誉と脂下(やにさが)って暮したのは覚えているはずだ。運動をしろの、牛乳を飲めの冷水を浴びろの、海の中へ飛び込めの、夏になったら続きを読む
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吾輩は猫である 八

 垣巡(かきめぐ)りと云(い)う運動を説明した時に、主人の庭を結(ゆ)い繞(めぐ)らしてある竹垣の事をちょっと述べたつもりであるが、この竹垣の外がすぐ隣家、即ち南隣(みなみどなり)の次郎(じろ)ちゃんとこと思っては誤解である。家賃は安いがそこは苦沙弥(くしゃみ)先生である。与(よ)っちゃんや次郎ちゃんなどと号する、いわゆるちゃん付きの連中と、続きを読む
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吾輩は猫である 九

 主人は痘痕面(あばたづら)である。御維新前(ごいっしんまえ)はあばたも大分(だいぶ)流行(はや)ったものだそうだが日英同盟の今日(こんにち)から見ると、こんな顔はいささか時候後(おく)れの感がある。あばたの衰退は人口の増殖と反比例して近き将来には全くその迹(あと)を絶つに至るだろうとは医学上の統計から精密に割り出されたる結論であって、吾輩のごとき猫といえども続きを読む
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吾輩は猫である 十

「あなた、もう七時ですよ」と襖越(ふすまご)しに細君が声を掛けた。主人は眼がさめているのだか、寝ているのだか、向うむきになったぎり返事もしない。返事をしないのはこの男の癖である。ぜひ何とか口を切らなければならない時はうんと云(い)う。このうんも容易な事では出てこない。人間も返事がうるさくなるくらい無精(ぶしょう)になると、どことなく趣(おもむき)があるが、こんな人に限って続きを読む
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吾輩は猫である 十一(1)

 床の間の前に碁盤を中に据(す)えて迷亭君と独仙君が対坐している。
「ただはやらない。負けた方が何か奢(おご)るんだぜ。いいかい」と迷亭君が念を押すと、独仙君は例のごとく山羊髯(やぎひげ)を引っ張りながら、こう云(い)った。続きを読む
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2006年07月26日

吾輩は猫である 十一(2)

 主人は面倒になったと見えて、ついと立って書斎へ這入(はい)ったと思ったら、何だか古ぼけた洋書を一冊持ち出して来て、ごろりと腹這(はらばい)になって読み始めた。独仙君はいつの間(ま)にやら、床の間の前へ退去して、独(ひと)りで碁石を並べて一人相撲(ひとりずもう)をとっている。せっかくの逸話もあまり長くかかるので聴手が一人減り二人減って、残るは芸術に忠実なる東風君と、長い事にかつて辟易(へきえき)した事のない迷亭先生のみとなる。
 長い煙をふうと世の中へ遠慮なく吹き出した寒月君は、やがて前同様(ぜんどうよう)の速度をもって談話をつづける。
「東風君、僕はその時こう思ったね。とうていこりゃ宵の口は駄目だ、と云って真夜中に来れば金善は寝てしまうからなお駄目だ。何でも学校の生徒が散歩から帰りつくして、そうして金善がまだ寝ない時を見計らって来なければ、せっかくの計画が水泡に帰する。けれどもその時間をうまく見計うのがむずかしい」
「なるほどこりゃむずかしかろう」
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